FP&A/業績管理の基本 第4回:ダッシュボードって本当に使われるの?

FP&A

経営管理ダッシュボードとは?

管理会計・業績管理システムを導入しようとすると、必ずといっていいほどダッシュボード構築が検討されるものと思います。

ダッシュボードは車でいえば運転席の計器類のことですが、まさにその経営管理版。最近ではBIツールなどを用いて比較的容易にダッシュボードを構築することができるようになり、実際に自社内で導入された方も多くいらっしゃるものと思います。

経営ダッシュボードとは、概ね以下のようなものではないかと思います。

  • 経営管理に必要な情報のエッセンスが、
  • いつでもどこでも、
  • タイムリーにアクセスでき、
  • 必要に応じて詳細情報まで詳細確認(ドリルダウン)できる
  • アプリのようなもの

ビジュアル的には以下のようなイメージですね。

ダッシュボード画面

一見便利そうに見えるのですが、果たして 本当に経営陣の役に立つダッシュボードを構築することはできるのでしょうか?

高額な投資でダッシュボードを構築したけれども、結局ほとんどだれもアクセスしていないという状況はできれば避けたいところです。

結論:結局は情報提供サービス。顧客満足度高いダッシュボードは使われる。

ダッシュボードは、経営企画・経営管理部門によって提供される、マネジメントに対して提供される経営支援サービスといえます。

「サービス」なので「顧客(ユーザー)」のニーズを充足できることが大前提ですね。結果として、本当に使われるダッシュボードを構築するためには、以下のようなことが大切になります。

  • 「顧客(ユーザー)」が誰なのか、しっかりと定義されている。
  • 「顧客(ユーザー)」本位の情報提供になっている。
  • タイムリーにアップデートされている。
  • 「顧客(ユーザー)」にとってユーザーフレンドリーな設計になっている。
  • 「顧客(ユーザー)」のニーズの変化に対しても迅速に対応できている。
  • 定着までの地道な努力(コミュニケーション)が継続されている。

顧客を定める:ユーザー毎に見たい情報は違う

経営企画部門(FP&A)にとっては、シニアマネジメントと現場の両方が顧客であり、両方をにらみながら経営の支援を行っていくことが目標になります。どのようなダッシュボードであれば、顧客である経営陣や現場マネジメントの満足度を高めることができるでしょうか?

結局顧客満足という観点なので、普遍的な正解はないということかもしれません。仮に経営者が顧客であっても、100人いれば100通りニーズが異なる世界だということです。したがってダッシュボードを作るまえに顧客を明確にする必要があります。

例えばトップマネジメントでも、「ドライバー」スタイルの社長もいれば、「(大型船の)船長」スタイルの社長もいると思います。ドライバーはある程度細かいメーターも見ながら自分でハンドルを握りますが、船長の場合、ある程度ほかの乗組員が細かい情報を見ていて、その中でもう少し大きな次元で方向性を定めているかもしれません。そうなると同じ「社長」が顧客でも、見せる計器は異なることになります。

また、少なくとも各ダッシュボードとそれを利用する人の関係は一対一にすることが大切です。

異なる顧客に対して満足度を高めようとするとが、結局焦点がぶれてしまいます。見る側にしてみれば、知りたい情報を探す手間が増えるだけでなく、不要な情報が多く含まれるとの錯覚が生じて、満足度が低くなる可能性が高くなります。

技術的には同じプラットフォームの上で構築しても構わないのですが、ユーザーインタフェースなどの工夫で、利用者側には、その利用者が必要とする情報だけにアクセスできるような形式がよいでしょう。

ユーザーが見たい情報/提供者が見せたい情報

ダッシュボードの顧客が設定できている前提でコンテンツを決めていくことになりますが、そこには①ユーザーが見たい情報、②ユーザーに見せたい情報の2種類が含まれています。

通常は①の顧客が見たい情報をしっかりと確認し、それをダッシュボードデザインに組み込んでいくことになります。デザインの段階でインタビューなどを行い、ニーズをしっかりと把握していくという手順が一般的でしょう。

一方、ユーザー側が何を見たいのかわかっていないケースもあるものと思われます。その場合は、いくらダッシュボードのユーザーにインタビューしても、本当に有用なものを作ることができません。

実際に現場でダッシュボードをデザインする場合には、この2種類の情報が混在していると思います。②については企画部門の本領発揮といきたいところですが、必要性を感じていないユーザーに対して、目新しい分析やその理解については、十分なフォローアップコミュニケーションが不可欠です。

ダッシュボードは鮮度がいのち

月次レポートなどをダッシュボードにするということは、技術的にはもちろん可能ですが、月一回の発行では、「ちらっと」見ただけでみるのをやめてしますリスクが高いと思われます。月一回の更新時にアクセスしてくれたとしても、目新しい情報が頻繁に追加されるわけではないため、結局見なくなってしまうのです。

そこで、ダッシュボードを構築する際は、可能であればなにか一つでもよいので、毎日、あるいは最低週一回の情報アップデートがあるとよいでしょう。たとえば売上であれば、一番タイムリーに状況確認できるかもしれませんね。

毎日見ても仕方ない、という情報もあるかもしれませんが、できるだけある程度頻度高くアップデートされている感を出していきましょう。目安としては最低でも週1回は何かしら情報がアップデートされることが望ましいでしょう。

陳腐化回避:コンテンツは常に見直し

経営管理情報の月次レポート作成などに携わっていると、時折、ずっと同じフォームで情報提供していればよいと思っているのではないかと思われることがあります。

経営がおかれる環境は毎日変化しており、機能報告したレポートの内容では、明日は分析としてふさわしくないということは十分に起こりえるものです。

情報提供側としては、つねにダッシュボードのコンテンツ自体が陳腐化していないかよく検討し、常にアップデートして、「今」のユーザー満足が高められるようにアップデートする必要があるでしょう。

役に立つと分かってもらうまでの努力を怠らない

ダッシュボードのコンテンツ、特にユーザーに見せたい情報の提供にしても、情報の鮮度の問題にしてもそうですが、一度「役にたつ」ということを感じてもらえない限り、継続的に利用してもらうことが難しくなります。

どんなに良いダッシュボードを作っても、「役に立つ」ことを理解してもらう努力を怠ってしまうと、結局「魂が入らない」ダッシュボードとなってしまうでしょう。

ダッシュボードによる情報の開示を始める場合には、なんとしてもそのダッシュボードが役に立つこと、どのように使えばよいのか、ということをしっかりとコミュニケーションし、定着させましょう。

具体的な方法としては、一般的に行われるようなリリース直後からのトレーニングにとどまらず、定期的に会議などの場を通じて実際にダッシュボードを使用し、そのなかで実践的に使用していく姿を見せて、どのように使えば何が見えて、どのように有効なのか、ということを実感してもらえます。

まとめ

いまいちど、使われるダッシュボードについては、以下のようなポイントをしっかりと抑えることが大切です。

  1. ユーザーを定める
  2. ユーザーが必要なコンテンツを選定する
  3. ユーザーに伝えたいコンテンツを選定する
  4. ユーザーが使いやすいダッシュボードをデザインする
  5. ある程度の頻度で定期的に情報をアップデートする
  6. ユーザーがこのダッシュボードが役に立つということを理解できるように継続的に働きかける
  7. 環境の変化を見極めて、常にコンテンツの刷新を図る

このようにリストすると、ダッシュボードに限ったことではなく、一般的な考え方の羅列のようにも見えてきます。どのような仕事でも顧客のことをしっかりとみて、どうやったら満足してもらえるか、ということが大切なのは変わりありません。

ダッシュボードもユーザーに対するサービスであることを忘れずに取り組むことが、有用なダッシュボードの設計・運用の第一歩なのかもしれませんね。

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