業績管理といえば、一般的に、①定期的(例えば毎月)レポートを作成、②KPI、前年からの差異(前年比)、予算からの差異(予算比)あるいはトレンド等を分析を行い、③分析結果に基づいてどのようなアクションが必要か検討する、という段取りになっているものと思います。これは会社のPDCAのなかでも、特にCAPのところで大切な要素ですね。その中で今回は差異分析について。
ドリルダウン、どこまで掘っても分からない
ERPや管理会計システムでは、あらゆるデータが一元化されており、その中でドリルダウンできるとうことがメリットとして謳われます。
実際に情報を掘っていくといろいろわかるのは事実ですし、データドリルダウンは魅力的な機能の一つですね。何か細かいことを確認したいとき、みたいところをどんどん深掘りし、最終的には個別支払伝票までたどれる便利さは計り知れません。
でもドリルダウンでわかるのは、あくまで「どこ」で差が生じているのかという場所だけ。FP&A組織内で毎月の実績検討会などを行っていても、「どこで」差が発生したかにとどまるコメントが散見されますが、そこでとどまっていると付加価値を生み出すことはできません。
付加価値を生み出す差異分析とは
差異分析もあくまでPDCAの中では一つのツールにすぎません。経営陣が知りたいのは、何が起こっていてどうアクションを取ればよいのかということ。
そのために予算を作り、実績を分析し、今後の見通しを検討します。そこで差異分析のツールとして、ドリルダウンしていくことになりますが、どこまで掘っても答えは見つかりません。
数字をどんなに掘り返しても、結局どこで差が出たのかがわかるだけ。ここでまず大切なことは、「なぜ」差異が発生したのか、というところですね。まずはその点をしっかり押さえたうえで、どのあたりが「肝」になる差異になのかということを考える必要があります。
木々の枝葉をみるのではなく、森を見渡す
仮に徹底的にドリルダウンし、どこで差異が発生したのかを説明したとしましょう。そのとき上司やそのレポートをレビューする必要があるマネジメントメンバーなどは、どう反応するでしょうか?おそらく、「で?」と聞かれることは容易に想像できます。
上司、またその上司は、個別小さな差異について細かく知りたいのではなく、全体としてどういったことが起こっているのかを知りたいのです。細かい説明を聞かされると徐々にしびれを切らして、話を聞いてもらえなくなるでしょう。
担当者として木々の枝葉を見ることはあっても、そこから全体としてどのようなことが語れるのか、そこがまさに問われているところなのです。分析を進めていく中で仮説を立て、それを検証しながら大きなストーリーとしての報告をまとめていかなければなりません。
最後は地図を描く
まずは実績を予算や前年と対比していく。
しかし、そこでは個別細かなことにも気を配りつつ、全体としてどのようなことが起こっているかを把握する。そこで初めて差異分析の価値が生まれてきます。
そして経営陣の目で考え、この実績と分析結果を踏まえて、どのようなことがわかり、これからどうすればいいのかを提案すること、これが業績管理担当者としてのゴールだと思います。
まさに、経営陣に今後の方向性を示す地図を提供する、そしてPDCAのC→Aをドライブすることが、業績管理担当者の究極の目標といえそうですね。